葉酸とは

葉酸は、ビタミンB群のひとつで、緑黄色野菜や果物などの身近な食材に多く含まれています。はじめにほうれん草から発見されたので、「葉っぱの酸」と名前がつきました。水溶性ビタミンのため水に溶けだしやすく、熱に弱いといった特徴があります。
DNAやたんぱく質を合成し、細胞の生産や再生を助けて、体の発育を促してくれるほか、赤血球の形成を助ける働きがあり、造血ビタミンとも呼ばれています。

どうして妊娠期に葉酸が必要なの?

ではどうして、葉酸は妊娠中に摂ることが勧められているのでしょうか。
妊娠中に葉酸を摂る大切な理由として、赤ちゃんの「神経管閉鎖障害のリスクを下げる」ことがあげられます。

※神経管閉鎖障害とは
脳や脊髄など中枢神経のもとになる神経管をうまく形成することができなかったために、脳が発達できず、無脳症や水頭症になったり、運動神経、反射神経、感覚神経などに障害が起こり、歩行困難や運動障害、膀胱や直腸などの筋肉が麻痺することによって排尿・排便障害が起こる二分脊椎症があります。
神経管閉鎖障害の赤ちゃんは、年間500~600人(10000人に5.6人)生まれています。

前述のとおり、葉酸はDNAの合成に関わる栄養素です。葉酸が不足すると、DNAがうまく合成できず、正常な発育に支障をきたす恐れがあります。
特に妊娠初期は、赤ちゃんの脳や脊髄、中枢神経系へと発達する「神経管」が作られる大切な時期です。この時期に葉酸が不足し、正常に細胞分裂できず神経管がふさがれてしまうと、流産や死産、障害をきたす原因となる恐れがあります。妊娠初期に十分な葉酸を摂取することで、神経管閉鎖障害のリスクを減らすことができます。しかしながら、この障害の原因は葉酸の不足だけでなく複合的なものであるため、後述の推奨摂取量を摂取すればその発症を必ず予防できるというわけではないことは十分留意すべき点です。
また、妊娠初期に限らず、お腹の中では赤ちゃんの細胞分裂が盛んに行われています。葉酸は赤ちゃんの細胞分裂を促し、健全な成長をサポートしてくれます。
なお、葉酸の摂取は赤ちゃんだけでなく、妊婦さん自身の体にも大切な働きがある栄養素です。ビタミンB12とともに赤血球を作ったり、細胞の増殖に必要なDNAの合成などに関わっています。そのため、不足すると貧血や神経障害を起こしたり、動脈硬化のリスクを高めたりします。

<妊娠期における葉酸の効果>
●赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを軽減する
●胎児や乳児の成長を促す
●妊婦さんの貧血予防          など

いつ、どのくらい摂取すれば良いの?

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(※1)によると、推奨する1日当たりの葉酸摂取量は、成人の男女で240㎍とされています。
しかし、妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の女性は、さらにサプリメントや栄養補助食品などから400㎍の追加摂取が推奨されています。
また、妊娠中期・後期は、食事摂取基準の葉酸量に加えて240㎍、授乳期は、100㎍の追加摂取が望ましいとされています。

(※1)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

妊娠を計画している段階で葉酸の摂取が必要な理由

ところで、まだ妊娠をしていない時期にも葉酸を追加して摂取する必要があるのか、その理由についてお話します。
赤ちゃんの神経管閉鎖障害は、受胎後およそ28日で閉鎖する神経管の形成異常です。神経管閉鎖障害を防ぐためには、神経管ができるころに、葉酸が妊婦さんの体の中に十分にあることが重要です。しかし、妊娠を知るのは神経管の形成に重要な時期(受胎後およそ28日間)よりも遅いことが多いです。
そのため、妊娠初期だけでなく、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性も、葉酸の摂取が勧められています。厚生労働省では、妊娠する1ヶ月以上前からの葉酸摂取を推奨しています。(※2)

(※2)厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」(平成12年12月28日報道発表資料)

食事からうまく摂取するためには

前述のとおり、推奨する1日当たりの葉酸摂取量は、成人の男女で240㎍とされています。葉酸は、緑黄色野菜や果物などに豊富に含まれており、通常の食事量では、極端に不足したり、過剰摂取したりする心配はありません。
実際に、国民健康・栄養調査(2019年)によると、葉酸の摂取量は、男性で平均295㎍/日、女性で平均283㎍/日でした。男女ともに日本人の食事摂取基準の推奨量240㎍/日を満たしていることがわかります。(※3)
一方で、年齢別に見てみると、20代男女、30代女性は推奨量以下という結果でした。不足しにくい栄養素だとしても、不規則な食生活や過度なダイエット、偏食があると不足してしまう可能性があるので、注意が必要です。
妊娠を計画中~授乳期に当たる女性は、さらに追加しての葉酸摂取が推奨されているので、葉酸を多く含む食品を積極的に摂ったり、サプリメントを活用したりと、食生活を見直してみましょう。

(※3)国立健康・栄養研究所「国民健康・栄養調査」

まずはバランスの良い食事を心がけましょう!

若い女性では、「やせ」の割合が高く、葉酸に限らず、エネルギーや栄養素の摂取不足が心配されます。主食、主菜、副菜を組み合わせた食事が、バランスの良い食事の目安になります。妊娠前から自分の食生活を見直し、健康なからだづくりを意識してみましょう。

1日3食を規則正しく、一汁三菜を基本にするとバランスが整いやすいです。
一汁三菜とは、「主食」+「汁物」+おかず3品(「主菜」1品+「副菜」2品)で構成された献立のことを言います。

「主食」 ごはんやパン、めん類など   「汁物」味噌汁やスープなど
「主菜」 肉や魚、卵、大豆製品などがメインのおかず
「副菜」 野菜、きのこ、海藻類などの煮物やサラダ、おひたしなど

「主食」を中心に、エネルギーをしっかりと

炭水化物の供給源であるごはんやパン、めん類などを主材料とする料理を「主食」といいます。妊娠中や授乳中には、必要なエネルギーも増加するため、炭水化物の豊富な主食をしっかり摂りましょう。

「主菜」からたんぱく質を十分に

たんぱく質は、からだの構成に必要な栄養素です。主要なたんぱく質の供給源である肉、魚、卵、大豆・大豆製品などを主材料とする料理を「主菜」といいます。肉ばかりと偏らず、様々な主菜を組み合わせてたんぱく質を十分に摂りましょう。

「副菜」から不足しがちなビタミン・ミネラルをしっかりと

葉酸を含むビタミンや、ミネラル、食物繊維の供給源となる野菜、豆類、きのこ、海藻などを主材料とする料理を「副菜」といいます。野菜をたっぷり使った「副菜」でビタミン、ミネラル類を摂りましょう。

乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などでカルシウムを十分に

カルシウムは不足しがちな栄養素であるため、乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などで十分に摂りましょう。

葉酸を多く含む主な食材

葉酸は、緑黄色野菜や果物に豊富に含まれていますが、その他にも、鶏や豚、牛の肝臓や、鶏卵、納豆などにも含まれています。

●葉酸を多く含む食品一覧●(※4)

食品1食あたりの可食量(g)1食あたりの葉酸量(㎍)
ほうれん草(ゆで)80g(小鉢1皿)88㎍
枝豆(ゆで)30g78㎍
グリーンアスパラ(ゆで)40g(2~3本)72㎍
とうもろこし(ゆで)100g(1本分)97㎍
焼きのり3g(全形1枚分)57㎍
いちご80g(3~4個)72㎍
納豆50g(1パック)60㎍
鶏レバー(生)40g520㎍
豚レバー(生)40g324㎍
牛レバー(生)40g400㎍
(※4)文部科学省「日本食品成分表2020年版(八訂)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

葉酸は水溶性ビタミンであり、熱に弱いため、調理法や食べ方によっても葉酸の摂取量が変わってきます。長時間水につけたり、加熱したりすると栄養分が損なわれてしまうので、茹でたり炒めたりと加熱する場合は、なるべく短時間で調理するようにすると良いでしょう。スープなど汁ごと食べられる調理法は、溶けだした栄養分も一緒に食べられるのでおすすめです。また、熱に弱いと聞くと、サラダなど、生のまま食べる方が良いように感じるかもしれませんが、加熱によってすべての葉酸が失われるわけではなく、また、加熱することでかさが減り、生野菜よりもたくさん食べることができるというメリットもあるので、生野菜にこだわる必要はありません。
注意点として、レバーも葉酸を多く含む食品ですが、同時に「ビタミンAの含有量が多い」のが特徴です。妊娠中のビタミンAの過剰摂取は、胎児の奇形を引き起こす可能性が高くなることが知られています。レバーを食べる場合は、少量(1口サイズ1~2個程度)にし、頻繁に食べないようにした方が良いでしょう。

葉酸を摂りすぎると?

葉酸の上限量は1日あたり1000㎍とされています。(※1)
これはサプリメント等からの葉酸摂取に対する上限量で、食事からの葉酸摂取の上限量は設定されていません。
通常の食事で過剰摂取となる心配はありませんが、サプリメント等を併用する場合は、必ず適正量を守って摂取しましょう。

“葉酸がしっかり摂れる”1日の食事例

(1人分の栄養価)エネルギー:2031㎉、たんぱく質:86.4g、カルシウム:929mg
鉄:14.9mg、葉酸:740㎍、食塩相当量:8.5g

◆朝食(エネルギー:461㎉、たんぱく質:20.5g、カルシウム:146mg、鉄:4.5mg、葉酸:266㎍、食塩相当量:2.0g)

ごはん(お茶碗1杯180g)
豆腐とわかめの味噌汁
納豆(1パック)
ほうれん草のおひたし(ほうれん草60g)
味付けのり(小袋1つ)

●納豆や海苔は、葉酸を豊富に含む食材です。手軽なので忙しい朝でも取り入れやすいです。

◆昼食(エネルギー:776㎉、たんぱく質:28.4g、カルシウム:274mg、鉄:3.1mg、葉酸:104㎍、食塩:3.3g)

ナポリタン(スパゲティ80g)
野菜とゆで卵のサラダ
(サニーレタス、トマト、きゅうり、ゆで卵、ドレッシング)
バナナヨーグルト

●めん類の時は、たんぱく質やビタミン・ミネラルが不足しがちです。野菜や卵、ヨーグルトなどを使った副菜を組み合わせると手軽に補充できます。

◆夕食(エネルギー:623㎉、たんぱく質:28.8g、カルシウム:150mg、鉄:3.4mg、葉酸:240㎍、食塩相当量:2.9g)

枝豆ごはん(お茶碗1杯180g)
八宝菜
小松菜と肉団子の中華スープ
いちご(80g、3~4個)

●枝豆を使うと、手軽に葉酸、鉄がアップできます。小松菜などに含まれる植物性の鉄は、肉や魚などの動物性のたんぱく質やビタミンCと一緒にとることで、体内吸収率がアップします。

◆間食(エネルギー:171㎉、たんぱく質:8.7g、カルシウム:359mg、鉄:3.9mg、葉酸:130㎍、食塩相当量:0.3g)

ミックスナッツ(15g、アーモンド・くるみ・カシューナッツ)
鉄カルシウム強化乳飲料(200ml)

●おやつは、三食の食事で摂れない栄養素を補うようなものがおすすめです。

さいごに

妊娠に気づいていないころから必要とされる葉酸ですが、普段からバランス良い食事をしていれば、極端に不足することはほとんどありません。
しかし、妊娠中は特に葉酸が必要となるため、葉酸不足にならないよう、バランスの良い食事を心がけましょう。
妊娠初期はつわりがつらい時期でもあります。吐き気がひどい場合は、食べられるものを優先し、葉酸サプリメントなどをうまく活用して、赤ちゃん、妊婦さん自身の健康のために上手に葉酸を摂取しましょう。

■この記事を書いたのは ■

管理栄養士・離乳食アドバイザー ・フードスペシャリスト・ピンクリボンアドバイザー初級の資格を持ち、一児の母。

病院・福祉施設の献立作成や衛生管理指導、栄養相談などを行なってきたが、自身の妊娠を期に、離乳食に興味を持ち、産休期間中に離乳食アドバイザーの資格を取得。

現在は、子育てに奮闘しながら離乳食・幼児食についてブログやInstagramで配信中。 

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